まん延する「ベンチマーク」

みなさんは、「ベンチマーク」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
(略)
しかし、仮に、エンジニアに、『このブラウザは速いのですか』とたずねてみても、そのような単純な二分法では答えてくれないはずです。
『ブラウザの速度といってもいろいろな要素があるので、中には既存のものより速いものも遅いものもあるでしょうし、速いといっても処理の内容によっては逆効果だったり、ぶつぶつ……』と、まあ、歯切れの悪い答えしか返ってこないでしょう。
それが科学的な誠実さだからしょうがないのです。
ところが「ベンチマーク」は断言してくれます。
『点数が高いなら速いし、低いなら遅いのです。
また、すべてのテストの点数を足せば総合点が求められます。
総合点が、高ければ高いほど速いブラウザなのです。』
このように、「ベンチマーク」は実に小気味よく、物事に白黒を付けてくれます。この思い切りの良さは、本当の科学には決して期待できないものです。
(略)
多次元情報をまともに処理できない人間の精神のアーキテクチャには深刻な脆弱性があるし、薬物や遺伝子治療などのテクノロジを駆使してセキュリティホールをふさいでいきたいですね。おわり。