2002年4月、みずほ銀行に何が起こったのか

2002年4月。第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が合併しみずほ銀行となった。この件についてはたくさんの報道がされたため、そのとき何が起こったのか、覚えている人も多いはずだ。
当時のぼくはシステム開発に興味がある2ちゃんねらで、よって連日プログラマ板に出入りしてはゲラゲラ笑うなどしていた。やれやれ。

さて、9年前のあのとき何が起こったのか。インターネットを探してもなかなかまとまった資料がないので、回収できた資料をまとめてみたいと思う。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%BB%E9%8A%80%E8%A1%8C%E3%81%AE%E5%90%88%E4%BD%B5%E5%87%A6%E7%90%86

この運用方針の結果、2002年4月1日の合併当日からメインコンピューターの不具合が原因による大規模なシステム障害が発生し、同月中旬まで預金者に混乱を来すこととなった。

  • 自行のATMの停止(通信エラー)が大半の店舗で断続的に発生。(前月にも旧第一勧銀店で小規模な停止が発生していた)
  • ATMで現金の預け入れ操作をすると取引未完了のまま(残高反映されず)となり、現金が返却されない。
  • ATMで預金引き出しの操作をすると、残高が反映されているのに現金が出金されずエラーとなる。
  • メインコンピュータおよび全銀ネットへの接続が不安定となり、ATMが稼働していても振込操作が行えない。
  • みずほ銀行キャッシュカードでE-net・BANCS・MICS提携ATMでの取引が出来ない。
  • 振込入金の日数単位での遅延
  • 法人が従業員のみずほ銀行の複数口座宛に給与振込(総合振込)を行うと、指定金額通りの入金が行われずに送金資金の範囲内で偏りが発生。(Aに30万円・Bに25万円・Cに20万円の振込を指定したのに、Aに1万円・Bに59万円・Cに15万円入金される等。)
  • 口座自動振替(引き落とし)が行われない、または二重に引き落とされている。(バッチデータの処理件数に追いつかず、発生したものとされる。)
  • 同月1日に10万5千件の未処理が発生。2日はイオンカード、4日はセゾンカード・ビューカード、5日はUCカード(※勧銀クレジット・富士銀クレジットなどが統合されてから最初)といった、みずほグループとは結びつきの強いクレジットカード会社の引き落とし日で、クレディセゾンは引き落とし不能でも支払遅延扱いにはしない旨を含んだ独自の「お詫び」を発表する。
  • 未処理件数は5日に250万件余り・二重引き落としが3万件まで積み上がり、個人に対しての影響が広がる。

2002-03-28 http://www.nikkeibp.co.jp/archives/177/177041.html

第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行は2002年4月1日に合併するが、コンピュータシステムが一部未統合のまま、みずほ銀行が見切り発進する。富士銀行関係者が明らかにした。
少なくとも、口座振替業務のコンピュータシステムが3銀行間で統合できていない。つまり、銀行振替口座に3銀行の互換性がない。従来から口座振り替えできた銀行口座からは引き落としできても、他の2銀行からは4月1日以降も口座引き落としできない。コンピュータシステムが完全に統合される目途は「まったくたっていない」(富士銀行関係者)と明かす。4月1日に間に合わせることが絶望的であることは「3月25日の週になって判明した」(同)という。

2002-04-01 http://www.nikkeibp.co.jp/archives/177/177618.html
2002-04-01 【速報】みずほ銀行,初日朝からトラブル--ATMで預金,引き出しなどが不能に | 日経 xTECH(クロステック)

4月1日に開業したばかりのみずほ銀行で,ATM(現金自動預け払い機)のトラブルが発生している。午前9時30分現在,キャッシュ・カードを使った現金の預け入れや引き出し,残高照会のほか,通帳記入ができない。

2002-04-01 【続報】みずほ銀行ATMトラブル,テスト不十分で見切り発車か | 日経 xTECH(クロステック)

みずほ銀行のATMは,オンライン・システムが稼働したあと,午前8時40分ごろまでは正常に動作していた。だが,午前9時に店舗業務が一斉に始まった直後からATMに異常が出始めた。

みずほ銀行広報に確認したところ,「まだ状況が確認できていない。原因も不明だ」という状況だ。一方,みずほ銀行のある行員は顧客からの問い合わせに対し,「旧富士銀行と旧第一勧業銀行のホスト・コンピュータ間の接続で一部,うまくいっていない部分があるようだ」と説明している。

みずほ銀行本店(旧第一勧業銀行本店)の担当者は,「昨日の夜になってシステムの統合作業が終わったため,旧富士銀行のキャッシュ・カードや通帳を使ったATMの試験がほとんどできなかった」と説明している。

2002-04-02 http://www.nikkeibp.co.jp/archives/177/177897.html

みずほ銀広報室によると、障害の原因となったマシンは、旧第一勧業銀行のホスト・コンピュータと旧富士銀行のホスト・コンピュータを相互接続するために、新たに導入した「リレーコンピュータ」と呼ぶマシン。このマシンのプログラムにミスがあり、旧第一勧銀ホストと旧富士銀ホストが通信不能になり、結果的にATMの障害につながった。

具体的には、このリレーコンピュータのプログラムの誤りで、一定量以上のデータを受けるとデータがオーバフローし、処理が停止してしまうというもの。みずほ銀広報室によれば、3月29日から4月1日午前0時までATMでの処理を全面停止していたことと、期末処理とが重なり、4月1日始業時にリレーコンピュータに大量のデータが一斉に流れ、システムがハングアップしてしまったという。システム統合に当たっては、このリレーコンピュータ以外にトラブルはないとしている。

2002-04-03 Loading...

 ATMを利用して他行で払い出し手続きを行った場合、実際に預金がある銀行側のコンピューターはまず口座の残高を減らす手続きを行った後、他行に支払い許可の情報を伝えるシステムになっている。
 みずほ銀行のATMは1日午前8時ごろに故障し、翌日午前8時まで利用できなくなっていた。しかし、同行によると、1日の午前9時前後の数秒間、システムが作動した時間帯があり、この間に他行で行われた払い出しについて、残高は減らしたものの、その直後にシステムが機能しなくなり支払い許可の方が伝達されなかったという。

2002-04-05 みずほホールディングスが緊急記者会見,障害内容と今後の対策を発表 | 日経 xTECH(クロステック)

まず,みずほ銀行の口座から預金を引き出した場合に,現金が未払いにも関わらず残高が減ってしまうトラブルはこれまでに147件発生。原因は,旧第一勧業銀行のホスト・コンピュータと旧富士銀行のホスト・コンピュータを接続する部分の不具合だった。具体的には,ホスト・コンピュータ同士のデータのやり取りを中継する「リレー・コンピュータ」と,ホスト・コンピュータとの接続プログラムにバグがあった。

一方,公共料金の自動引き落としなどの口座振替が遅延するトラブルは約250万件。主な原因は,引き落としの請求データを旧3行のホスト・コンピュータに振り分ける処理が滞ったこと。さらに人的ミスも重なり,二重引き落としも4月4日までに約3万件発生した。来週中には,処理の遅れを取り戻したいという。

2002-04-10 情報システム事故(7)みずほ銀行システム障害に見る「動かないコンピュータ」の根本原因 | 日経 xTECH(クロステック)

2002-04-26 あなたの会社は,みずほ銀行を他人事として笑えるか | 日経 xTECH(クロステック)

2002-05-30 続・みずほ銀行システム障害に見る「動かないコンピュータ」の根本原因 | 日経 xTECH(クロステック)

2002-06-19 http://www.nikkeibp.co.jp/archives/191/191859.html

システム統合を効率的に進めるための策として、「経営を統合する3行のシステムは各行の責任で行う」という体制をとってきたことが原因で、「他行との連携部分が後手となった。統合までの時間が迫った中、現場が上層部に問題点や不安な点を上げにくくなったことが大きな障害事故につながった」とした。
また、みずほ銀行のシステム担当役員も、押し迫る時間の中で、実際には最終的なシステムの統合テストを実施できる見込みもないのに、「4月1日の経営統合は問題ない」と前田氏ら役員に報告していたという。今回のシステム障害では、プログラムミスなど技術的な不備、現場から上層部への虚偽報告、システム担当役員の判断ミス---この3つが大きな引き金となった。

2002-06-19 みずほ,システム障害の原因と再発防止策をようやく正式発表 | 日経 xTECH(クロステック)

2002-06-27 http://itpro.nikkeibp.co.jp/NC/members/NC/JIREI/20020625/2/

2002-07-10 「現場の担当者は処分しない」---みずほ首脳が総括会見で言明(上) | 日経 xTECH(クロステック)

2002-07-11 「現場の担当者は処分しない」---みずほ首脳が総括会見で言明(下) | 日経 xTECH(クロステック)

口座振替にかかわる不具合は,大きく分けて四つあった。まず,口座振替の委託企業の情報を格納するマスター・ファイルの内容が正しくなかった。マスター・ファイルは,「ある企業は,磁気テープに振替依頼データを格納して持ち込んでくる。データの形式は独自フォーマットである」などの情報を含んでいる。このデータに不備があれば,「口座振替処理を正常に進めることはまず不可能」(大手金融機関のシステム担当者)。

次に口座振替処理の進ちょくを管理するプログラムに誤りがあった。委託企業から受け取った依頼データを口座振替システムに入力してから,最終的な口座振替の結果データを委託企業に返却するまでの間には,引き落としデータの用意や結果の書き込みなど,いくつかの処理を経ることになる。こうした処理の流れをうまく管理できなかった。

4月に口座振替処理が混乱する中で,「あるカード会社は結果データを受け取ることができたが,別の企業は結果データをもらえない」という具合に,委託企業ごとに差ができたのは,マスター・ファイルや進ちょく管理の一部に不具合があったからだ。

また,JCL(ジョブ制御言語)にもエラーがあった。JCLの中で入出力データの指定を誤り,二重引き落としが発生したと見られる。さらに,依頼データの受け付け事務を支援するシステムのプログラムの不具合やデータの不備が,事務作業をいっそう混乱させた。

「4月5日の会見では,ATM障害の原因は旧第一勧銀と旧富士銀行の勘定系を結ぶリレー・コンピュータにあると説明してしまった。その後,原因究明を進めたら,実際にはリレー・コンピュータではなく対外接続系に異常があったことが分かった。間違った報告をしてしまい申し訳ない」

まとめ

皆さん大変ですね

後日談

就職した三年前。以上のような経緯を知っていながら「まあさすがに大丈夫だろう」とメインバンクをみずほにしたらご覧の有様だよ!!